『 はじめてのマーケティング 』シリーズ – [ パイプライン管理 とは? 営業活動を見える化するポイント ]
現在の売上状況はどうですか? 売上を向上させる方法をお探しですか? 答えは、パイプラインにあるかもしれません。組織的に業績を上げている営業チームが取り組んでいる一つに、パイプライン管理があります。以前、用語説明はしましたが、今回は、このパイプライン管理について、そもそもパイプラインとは何か、適切にパイプラインを管理する方法などについて、しっかりとご紹介していていきます。
パイプラインとは?
パイプラインとは、見込み客が営業プロセスのどの段階にいるのかを視覚化したものです。パイプラインは、週、月、または年など、一定の期間内に成約すると予想される商談の数と、売上目標に達成するまでの距離を示します。目標達成に必要な見込み客を確保できているのか、その売上はいつ、どれくらい見込み込めるのかなどの売上管理を行うことができます。
例えば、パイプラインに100件の商談があり、平均売上額が100万円で、1億円に相当するパイプラインがあったとします。見込み客から契約までの平均成約率が10%の場合、1,000万円相当の売上が期待できます。単純に計算すると、仮に売上目標が2,000万円の場合、2倍、見込み客を顧客化する必要があります。(実際には、質と量の問題で、単純に2倍とは言い切れませんが…)
ここで役に立つのが、パイプラインの分析と管理です。
例えば、
- 問い合わせ
- アポイント獲得
- 訪問
- 提案
- 見積書提示
- 受注
などのように営業プロセスを細かく分け、見える化します。パイプライン内で、より多くの見込み客を、訪問から提案の段階に移るための改善点を見つけるなどができれば、より多くの見積書の送付や受注につながっていきます。
パイプライン管理 の効果
セールスマネージャーの72%が、月に数回、営業担当者とパイプラインのレビューミーティングを開催しています(Vantage Pointの調査)。デジタル化され、より営業やマーケティングのプロセスが見える化している現代においては、これまで以上にプロセス、データや数字と向き合うことが重要です。事実、Harvard Business Reviewの調査によると、営業プロセスを定義した企業と定義しなかった企業の間では、収益の伸びに18%の違いがあるとのことです。さらに、パイプライン管理において、3つの点を実践している企業では、28%高い収益成長が見られたとのことです。
ここでいうパイプライン管理における3つの点とは、以下となります。
- 営業プロセスを明確に定義する
- パイプライン管理に少なくとも月に3時間を費やす
- パイプライン管理についてセールスマネージャーをトレーニングする
パイプライン管理 のメリット
パイプラインは、ビジネスを成功させる上で重要な役割を果たします。パイプライン管理を適切におこなうと、次のようなメリットがあります。
- 見込み客が営業プロセスのどの段階にいるかを把握できる
- 将来の売上の予測を立て、目標とどれくらいギャップがあるかを把握できる
- 目標を達成するために、どう業務を改善するかの行動計画が立てられる
- また、どうリソースを確保して、対応できるかの対策案も立てられる
- 営業プロセスのどこに問題があるのかを見つけやすくなり、営業プロセスの改善に取り組める
- 見込み客獲得から育成などのマーケティングの費用対効果の改善につながる
など
パイプライン管理は、より多くの成約を実現させ、会社の健全性や将来の方向性を把握する上で重要な役割を果たします。
パイプライン管理を行い、成果を出すポイント
(1) 営業プロセスを定義する
パイプライン管理を行うためには、まず最初に営業プロセスを定義します。そのためには、2つの側面から行う必要があります。一つは自社の営業活動の標準化です。こちらは売り手目線の対応ですが、先程、記載した一般的な営業の流れ(アポイント獲得 → 訪問 → 提案 → 見積書の送付 → 受注など)を参考に、営業チームが、特に成果を上げている営業担当者がどのような手法や行動をしているかを洗い出し、統一していきます。
ただし、本質的には、プロセス管理や売上の予測をより高い精度でマネジメントしていくためには、見込み客のバイヤージャーニーと合わせる必要があります。例えば、多くのお客さまは、自分たちが抱えている課題を認識し、商品やサービスなどのソリューションを知り、比較検討などしながら、評価して、購入に至ります。
営業担当者の行動だけを基にしたプロセスではなく、お客さまの立場になり、お客さまの行動に対してプロセスを設計していくことが重要です。たとえば、お客さまの視点で考えると、次のような感じです。
- 接触する: お客さまとのつながりができる。例えば、お客さまがホームページから問い合わせをする。資料ダウンロードする。ウェビナーに参加する
- 打ち合わせの同意をする: お客さまが商品やサービスの説明を受けること、アポイントメントを了承する
- 打ち合わせをする: お客さまは現状や課題を共有し、営業担当者から商品やサービスなどによる解決の可能性の話を聞く。今後のことを営業担当者と共有する
- 解決策を提案してもらう: お客さまが抱えている課題を具体的に、どう解決できるのかに興味を持つ。どれくらいの費用かなどについても聞く。
- 提案書をもらう: 購入を考えている商品やサービスの提案書や見積書などを確認する
このように、お客さまの視点でプロセスを定義していくことで、より適切に各段階での状況が見えてきます。どれくらい見込み客がいるのか、アポが取れたのか、商談になったのなかなどの数字が見えてきます。また、アポ獲得率や商談化率、成約率などを予測、把握もしやすくなります。また、各段階でどれくらいの時間が必要かなども見えてくるため、より売上を予測しやすくなります。
(2) 商談や進捗情報は常に最新かつ正確な状態にする
売上予測ができない、売上予測がブレる、営業担当者の見込みの読みが甘いなどの理由で、営業支援システムや顧客管理システムの導入、パイプラインや営業プロセスの管理などをしっかりやっていこうと考える方は多いかと思います。そしてパイプライン管理を行うには、商談や進捗などの情報は常に最新で、正確なものが求められます。
そうすることで、営業活動の可視化がしっかり行え、各案件はどの段階にあるのか、目標達成までにどれくらいのギャップがあるのか、どのような対策が必要なのかを考えることができます。また、現状把握だけではなく、今までのデータを分析することで、例えば、見込み客の数や商談数は十分なのか、アポ獲得率や受注率には問題がないかなど、営業や販促活動における課題も把握でき、どこに力を入れるべきかも、より見えてきます。さらに、各担当者によっても違うため、それぞれに対してどう対策をするかも考えやすくなります。そのため、商談や進捗などの情報管理は重要です。
(3) フォローアップする
売上目標を達成し続けていくためには、商談数、アポ獲得数など、各段階で必要な件数を逆算して、常に必要な数を確保していくことが大事です。仮に発注書待ちや交渉中の件数が多く、今期、この四半期は目標達成できそうだとしても、新規案件獲得を、訪問やアポ獲得をサボってしまうと、次の四半期以降が厳しくなります。パイプラインが不足するという問題が起きます。
海外のある調査によると、10数年前には、見込み客にリーチするのに3、4回ほどの電話をかける必要があったそうですが、今日では8回以上必要とのことです。数字の精度はおいといても、確かに以前と比べると、間違いなく電話の件数を増やす必要性があるかと思います。また、2回ほどの電話で諦める営業担当者も多いです。以前、InsideSales.comのレポートでは、営業担当者は、平均1.3回の電話で諦めるという報告もありました。
そのため、簡単なことではありませんが、フォローアップすることは重要です。フォローアップのリマインダーを設定したり、あるいは電話ではなく、メールテンプレートを活用して、2週間後に自動で送るようなプロセスの自動化なども検討するといいでしょう。
(4) いい見込み客に集中する
どの案件も受注するまでに、それなりに同じような時間がかかります。そこで、当たり前の話になりますが、売れる可能性が高い見込み客や案件に焦点を当てることは大切です。
また、未商談をできるだけ早く見極めることも重要です。特に、見込み客との関係を築き、数週間や数ヶ月などの時間を費やすと、なかなか諦めることは難しいかもしれません。見込み客が興味がない、連絡が全然取れない、パイプラインの次の段階に進むのができないなどを早く特定できるように、ルールや条件などを設定していきましょう。例えば、5回以上電話をしたけど、つながらない場合は、諦めるなどです。そうすることで、次の営業機会にどんどん取り組んでいきます。
(5) パイプライン内の指標をモニタリングする
パイプラインは常に変化するため、次のような指標をモニタリングすることが大事です。
- パイプライン内の商談の数
- パイプライン毎の売上予測
- 平均受注金額
- 平均受注率
- 受注までの平均期間
これらの指標を定期的に確認することで、パイプラインやビジネスの健全性を把握することができます。また、営業やマーケティング施策により、どのように全体的な売上や成長につながったのかなども見てくるようになります。より効果の高い施策に取り組みやすくなります。
(6) パイプラインの改善に取り組む
状況が変わり、今までやり方では、うまくいかないことはあります。例えば、新型コロナウイルスの影響で展示会営業が難しくなったとか、テレアポをしているけど担当者がつかまらないなどがあったりします。
お客さまの情報・購買行動の変化にしっかりと向き合う必要があります。つまり、営業プロセス、パイプライン、営業やマーケティング施策などを見直し、売上を最大化するために、やり方なども必要に応じて変えていかなければなりません。今までうまくいっていたから、それが今後もうまくいくという保証はないのです。
そこで、例えば、パイプラインにボトルネックや問題があると思われるところを調べ、それらを解消する方法を試して、継続的に改善していくことが大事です。例えば、展示会営業に依存している会社であれば、外部ポータルサイトを活用するとか、検索広告をやってみるなど、一つひとつ試していくことが大切です。
(7) パイプラインを定期的に更新する
「指標をモニタリングする」で述べた通り、パイプラインは常に変化します。新しい見込み客が追加され、次の段階に移動し、最終的には成約につながっていきます。このようにお客さまは、見込み客から有望見込み客になり、実際に購入者となっていきます。その過程において、お客さまの行動や考え方、求めているものが変わってくるため、しっかりと一人ひとりに向き合っていくことが大切になります。そのため、お客さまの情報(デモグラフィックデータだけではなく、行動ややりとりなどの情報も含め)を最新な状態に保つことが重要です。そうすることで、いい見込み客や案件に集中できますし、また、メールによる効率的な育成を行うことも可能になります。
(8) セールスサイクルを短くする
法人営業の場合、営業活動の開始から成約に至るまでの期間であるセールスサイクルは、非常に長くなることがあります。3ヶ月、4ヶ月のときもあれば、1年以上かかることもあります。この期間が長くなると、成約リスクを高めることがあります。業務や課題解決の優先度が変わったり、見込み客が他の製品やサービスを見つけたり、考えを変えたりする可能性が高くなります。そのため、営業プロセスをできるだけ短くしようと努めることが大事です。
お客さまの状況や社内プロセスなどに関わってくるため、売り手の方でコントロールすることはできません。ですが、例えば、意思決定に役立つ有益な情報を今まで以上に提供したり、フォローアップの感覚を短くしたり、セールスサイクルを短くできる方法を考え、試していくことは大事です。そして、その効果を測り、継続的に改善していきましょう。
(9) 営業活動やプロセスを標準化していく
お客さまの状況や課題などはそれぞれ異なるため、一人ひとりに合わせてアプローチして、解決策を提案することは大切です。ですが、理想的なお客さまには、共通の特徴があったりします。根本的には同じような課題やニーズがあったり、選ばれる理由もいくつか共通しているものがあったりします。それらを基に、営業活動やプロセス、パイプラインの標準化を取り組むといいでしょう。成果を出している営業担当者やチームには、似たような営業プロセスがあったりします。
実際に、Harvard Business Reviewの調査によると、業績の高い営業チームと業績の低い営業チームの違いは、営業プロセスにあるとのことです。高業績の営業組織からの参加者の半分の方は、しっかりとモニタリングされ、きちんと実施、または自動化された営業プロセスを持っているとのことです。そのため、一人ひとりのお客さまに向き合うことは大切ですが、標準化された営業プロセスを確立させることは重要です。標準化された営業プロセスは、ビジネスの成長に合わせて、拡張することができます。
(10) 見込み客により多くのコンテンツを提供する
見込み客から購買へ移っていく各段階において、また購買意欲に応じて、見込み客が必要とする情報は違っていきます。そのため、マーケティングファネルを基に、各段階でどのような情報やコンテンツを必要としているのかを検討し、提供していくことが重要です。
コンテンツマーケティングについては、以前紹介しておりますので、詳しくはこちらをご確認ください。
- 『 今さら聞けない「 コンテンツマーケティング とは?」 』
- 『 コンテンツマーケティングのメリットと課題 』
- 『 コンテンツマーケティングのコンテンツの種類とは? 』
- 『 コンテンツマーケティングの企画 & 戦略を立てる準備 』
- 『 コンテンツマーケティングのチャネルプランを立てる 』
- 『 コンテンツマーケティング戦略を立てる 12のステップ 』
ここでのコンテンツ製作における課題は、Corporate Visionsによると、主に2つあります。
- 営業担当の1/3ぐらいの人しか、マーケティングチームに協力していない
- 営業担当者の半分以上が、マーケティングチームが作ったコンテンツの半分も使っていない
そのため、お客さまや見込み客とやりとりが多い営業チームとマーケティングチームがしっかりと協力し、お客さまが求める、有益なコンテンツを作っていくことが重要です。
(11) 営業支援システム (SFA) や 顧客管理システム (CRM) を使用してマネジメントする
営業担当者が一人で、月に数件の契約しかないような小規模な企業であれば、エクセルなどのスプレッドシートを使って、パイプラインを管理することは可能かもしれません。しかし、見込み客の数が多く、パイプラインや営業プロセスを各段階において、しっかり管理していくためには、営業支援システム (SFA) や 顧客管理システム (CRM) の活用を検討する必要があります。
逆に言えば、そのようなシステムがないと、パイプラインを適切に管理することはできないでしょう。大量の見込み客や案件を管理し、お客さまが望む適切なタイミングで、適切な情報を提供しながら、しっかりとフォローアップしていくことが大事です。結果的に、十分なパイプラインを確保でき、売上目標達成にもつながっていきます。
パイプライン管理 のまとめ
パイプライン管理をしっかりと行っていくことで、商談の数や状況など、営業活動の現状を把握することができます。また営業プロセスのどこに問題があるかを特定し、解決していけるようになります。そのためにも、営業チーム一人ひとりがその重要性を理解し、CRMやSFCの情報を正確かつ最新な状態にしていおくことが大切です。
パイプライン管理を行い、見込み客が営業プロセスのどの段階にいるのかを把握し、売上を継続的に上げていくために、どのような行動をとるかを計画し、実行していきましょう。