[ カスタマージャーニーマップの作り方 ]
前回、前々回で、カスタマージャーニーとはお客さまの視点になることであり、カスタマージャーニーのメリットや課題・懸念についてご紹介しました。今回は、そのカスタマージャーニーをわかりやすくビジュアル化した「カスタマージャーニーマップの作り方」について紹介します。
カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーとは、お客さまの行動や考え、感情などの変化を時系列で見える化し、お客さまの一連の体験を「お客さまの旅」として例えたものです。そして、カスタマージャーニーマップとは、カスタマージャーニーの成果物であり、お客さまの体験やその背景にある考えや感情、抱えている課題などをわかりやすくビジュアル化されたものです。
よくあるカスタマージャーニーマップは、お客さまが購入し利用するまで、もしくは、契約継続やリピートまでの、お客さまが辿る一連の体験、購買プロセスの詳細を図示化されたものです。売り手目線で言えば、認知から購入までの各段階において、お客さまが必要としているものや情報を、適切なタイミングや方法で提供するための設計図と言えるでしょう。
カスタマージャーニーマップを作る上で意識したいこと
カスタマージャーニーは、自社の視点ではなく、お客さまの視点から作っていくことが重要です。「 カスタマージャーニーとはお客さまの視点になること 」でご紹介しましたが、カスタマージャーニーは、お客さまの購入物語ゆえに点ではなく、線で、つまりお客さまの動きや流れを見ることが大切です。もっといえば、その物語は主人公のお客さまによって作られるのです。私たちが物語を生み出すのではないのです。
ウェブサイトに訪問した、資料をダウンロードしたなどの行動だけを見るのではなく、なぜそのような行動をとったのか、できるだけその前後や背景にあるものを意識するのです。そうすることで、数字からでは分からなかったこと、例えば、お客さまは、そのとき、どのような状態で、そのような行動をしたのか、また次にどうしたいのかなども見えてきます。
これらを踏まえて、カスタマージャーニーマップを作っていきます。
カスタマージャーニーマップの作り方
カスタマージャーニーを作る前に、ざっくりと作り方のイメージをお伝えしますと、
・お客さまは誰なのか?(バイヤーペルソナを描く)
・お客さまはどのような行動をするのか?
・その時、どういう状態で、どういう課題や考えを持っているのか?
・お客さまは、どんな情報を求めているのか?何を必要としているのか?
・では、私たちは、お客さまに対して何ができるのか?
などを考えたり、調べたり、質問したりして、企業視点では見えないお客さまの行動や状態、考えなどを見える化していきます。
手順1.カスタマージャーニーマップを作る目的を決める
どんなマーケティング施策をするにしても、まずは目的やゴールを決める必要があります。例えば、
・なぜカスタマージャーニーマップを作るのでしょうか?
・カスタマージャーニーマップのゴールは何でしょうか?
・どのようなお客さまを対象にしますか?
・お客さまの体験において、どのあたりにフォーカスしますか?
などを考えましょう。
これらの目的や目標をはっきりとさせることで、これ以降のプロセスが進めやすくなります。しっかりと「誰」「何」「なぜ」などを考えましょう。
手順2.バイヤーペルソナをつくる
お客さまとは誰なのか、どういう課題を抱えているのか、何を望んでいるのかなどがわからない場合、お客さまの状態や行動などの動きを把握することはできません。そのため、まずはバイヤーペルソナを作成することが大切になります。
バイヤーペルソナとは、自社の商品やサービスを提供する対象のお客さま像です。自社にとってお客さまの特徴を体現する架空の人物像です。このバイヤーペルソナには名前、年齢や職業などのデモグラフィック情報や、購買者のライフスタイルや趣味などのサイコグラフィックな情報も含みます。さらにBtoBにおいては、業務の目標や課題などの情報、企業情報なども含みます。
自社の顧客管理システムや外部の分析ツールなどを活用して、ターゲットとなりそうなお客さまのセグメント・グループをいくつか見つけていきます。そして、社内のメンバーにヒアリングしたり、実際のお客さまにインタビューしたり、アンケートをしたりして、バイヤーペルソナを作っていきます。このとき、バイヤーペルソナのゴールや課題なども設定していきましょう。
詳しくは、「 バイヤーペルソナ とは? 」をご確認ください。
手順3.バイヤーペルソナの行動を整理し、段階を設定する
カスタマージャーニーは、バイヤーペルソナが課題やニーズに気づいてから、あるいは商品やサービスを知ってから、購入し、利用・リピートするまで、または、使わなくなるまでの一連の体験を表しています。ただ、カスタマージャーニーは企業やビジネス内容、商品やサービスなどによって異なります。また、どこまでの段階または行動範囲をカバーするかはカスタマージャーニーマップをつくる目的やゴールによっても変わります。
それらを決めた上で、バイヤーペルソナの行動を時間軸に沿って整理し、購買段階を設定していきます。一般的な購買プロセスだと、認知、興味・関心、比較検討、購入などの購買段階があります。まずは、バイヤーペルソナをつくる際に得た情報なども参考に、購買行動の段階を作ってみましょう。
また、各段階において何を把握すべきかの切り口も決めていきましょう。一般的には、行動、タッチポイント(バイヤーペルソナと企業やブランドとの接点)、思考や感情、そして課題などが、カスタマージャーニーマップの縦軸にきます。上記の段階と同様に自社にあったもの設定しましょう。ネット上にある、さまざまなカスタマージャーニーマップのテンプレートも参考にするといいと思います。
手順4.バイヤーペルソナの各段階のゴールを見極める
バイヤーペルソナの行動の各段階において、バイヤーペルソナのゴールを見極めることはとても重要です。お客さまが購入に向かっていく過程において、それぞれの段階で課題を抱えています。どういう課題を抱えていて、何を成し遂げたいのか、解決するためにどう行動するのか、なぜ行動するのかを分析することはお客さまを知る上でとても大切です。
そのためには、これ以降の手順にも言えることですが、お客さまへのインタビューやアンケート、営業やサポートチームへのヒアリング、社内外におけるさまざまなデータの分析が必要になります。それらの情報を整理して、行動の段階に当てはめていくといいでしょう。ウェブサイトへのアクセスやSNSなどの情報だけなく、営業支援システムや顧客管理システムにあるデータ、満足度調査、お客さまへの対応情報など、さまざまなデータを活用しましょう。
手順5.タッチポイントを洗い出す
タッチポイントは、お客さまと企業やブランドとの接点です。お客さまとつながれるものやところであり、インタラクション(何かしらの影響や印象を与え合うようなこと)を指します。チャネルはその接点が起こる媒体や場です。例えば、自社サイトがチャネルなら、サイト上にあるダウンロード資料や動画などがタッチポイントになります。Facebookがチャネルなら、投稿や広告がタッチポイントです。他にもタッチポイントは、メールマガジン、広告、レビューサイトなどさまざまです。
お客さまが「どのようなチャネルで自社やブランドにアプローチをとるのか」「どのようなコンテンツやサービスから情報収集をするのか」「他にもどのようなタッチポイントがあるのか」を調べたり、考えたりしましょう。
まずは、できるだけ多くのタッチポイントを洗い出しましょう。
手順6.思考や感情などもマッピングし、整理する
バイヤーペルソナになりきり、ゴールや課題、行動やタッチポイントなどを洗い出している過程で、思考や感情、課題なども思いついたりするものです。そのようなとき、どのような理由で行動をしたのか、なぜそのタッチポイントだったのか、その接触したコンテンツやサービスなどついてどのように感じたのか、またその時に何を考えたのかなどを、できるだけ詳細に考えましょう。そして、それをマッピングします。
その後、グルーピングしたり、イラストを使ったりして、カスタマージャーニーマップの中身を整理しながら、行動や、思考・感情などを点としてではなく、一連の物語なるよう結びつけていきましょう。
手順7.リソース・コンテンツの現状とニーズを把握する
手順6まで行えば、現時点でのカスタマージャーニーマップは大体できあがります。ただ、実践的には、コンテンツやリソースなどのギャップが見えてきます。そこをどうするかを考える必要があります。どのようなコンテンツを持っているのか、次の段階に移っていただくために、どのようなコンテンツが必要そうなのか、コンテンツの目的は何かなどを考えていきます。
コンテンツマーケティングにつきましては、こちらをご確認ください。
手順8.カスタマージャーニーを検証する
カスタマージャーニーマップは作ったら、それでおしまいではありません。しっかりトラッキングして分析していくことが大事です。例えば、ウェブサイトの訪問者のうち、どれくらいの人が資料ダウンロードせずに離脱したのか?どれくらいの人が製品デモを希望したのか?など結果を分析していくことです。
そうすることで、架空であった「お客さまの旅」を検証していけます。つまりどの段階でお客さまのニーズに応えられなかったのか、あるいはお客さまの課題解決の旅は順調だったなどが確認できます。
手順9.カスタマージャーニーマップを改善する
先述した通り、データを分析し、その結果を踏まえ、対策をしていくことが重要です。例えば、ウェブサイトで提供している無料診断ツールよりも事例集の方が好まれていたなどが見えてくるかもしれません。その結果を踏まえ、違う用途や業界の事例集を作るなどコンテンツを増やしていき、実際のお客さまの動きやニーズに応じて対応できます。またカスタマージャーニーマップも改善できます。
またカスタマージャーニー自体も変わることがあります。環境の変化や技術の進歩などにより、お客さまの行動やタッチポイントも変わります。そのような変化に対応し続けていくために、常に改善していかなければなりません。
カスタマージャーニーマップを作る上での注意点
バイヤーペルソナの設定について
自社の商品やサービスの提供対象となる人物像であるバイヤーペルソナがはっきりしないと、カスタマージャーニー自体が曖昧になります。複数のバイヤーペルソナがある場合は、どのバイヤーペルソナについてのカスタマージャーニーを作るのかを明確にする必要もあります。
また、限られた情報を基にバイヤーペルソナやカスタマージャーニーマップを作っていくため、実態とのギャップは必ず出てきます。そのため、カスタマージャーニーマップだけではなく、その前提となるバイヤーペルソナの見直しも柔軟に行っていく必要があります。
お客さま目線で考える
バイヤーペルソナを作るのは、お客さま視点で考えられるようになるためです。ですから、カスタマージャーニーを作るときも、自社目線ではなく、お客さま目線で考えなければなりません。自分たちが、「こうあってほしい」「こうしてほしい」という願望や「こうに違いない」という自分目線の考えをマッピングしてはいけません。お客さまへヒアリングやアンケートをしましょう。お客さまにかかわる関係者、お客さまを知っている人など、複数名で、カスタマージャーニーマップ作りに取り組むといいでしょう。
最初から完璧を目指さず、定期的に改善していく
カスタマージャーニーマップを作るのは簡単なことではありません。情報を集めたり、考えたり時間はかかりまし、最初から精度の高いものを作るのは難しいものです。はじめからきちんとしたものを作ろうとすると、なかなかカスタマージャーニーの見える化はできません。
まずは、一度作ってみるといいでしょう。その過程において、自分たちがわかっていないところが見えてきます。ここはお客さまに聞かないとわからないからインタビューをお願いしようとか、営業担当者にヒアリングしてみようなど、改善のアイデアが見えてきます。手順8や9でも述べましたが、検証して、改善していくことが重要です。
カスタマージャーニーマップの作り方 まとめ
カスタマージャーニーを作り、お客さまの目線になることで多くのメリットがあります。営業やサポート担当者などお客さまに関わるすべての人と共通認識を持つことで、みんなが、その時々でお客さまに対して適切な対応をできるようになります。
コンテンツの企画や制作に役に立ちます。KPIをやメトリックスなどの指標の設定もしやすくなります。お客さまの行動や考え、感情などの変化を時系列で見える化することで、よりお客さまに適したサービスや情報などを提供でき、セールスサイクルが短くなったり、顧客満足度やリテンションレート(顧客維持率)を高めたり、ブランド価値を向上できたりします。
これらを実現していくためにも、しっかりとカスタマージャーニーマップを作っていきましょう。