[ コンテンツマーケティング戦略を立てる ]
今回は、コンテンツマーケティングの戦略を立てる12のステップを一つひとつ解説していきます。
コンテンツマーケティング戦略を明文化する必要性
先日紹介しました、Content Marketing Institute (CMI) と MarketingProfs の調査では、「BtoC企業の67%、BtoB企業の57%が、文書化されたコンテンツマーケティング戦略を持っていない」とのことでした。
明文化された戦略がない企業の多くは、うまくいっていない一方で、戦略を文書化している企業は、「コンテンツマーケティングの取り組みは成功している」と判断している割合は多いとのことです。運任せにならないように、またブレないためにも、コンテンツマーケティングの戦略を立てて文書化していきましょう。
コンテンツマーケティング戦略を立てる 12のステップ
Step1. コンテンツマーケティングの現状を分析する
コンテンツ計画を立てるには、自社のコンテンツマーケティングの現状を把握する必要があります。まずはコンテンツマーケティングにおけるSWOT分析(コンテンツSWOT)を行い、自社の強み・弱み、市場や競合他社における機会や脅威を理解していきましょう。それぞれの項目で、重要なものを3つほど挙げましょう。自社と自社を取り巻く環境の現状が見えてきます。
コンテンツSWOTを行う
クロス分析をする
コンテンツSWOTの後は、クロス分析をするといいでしょう。クロス分析とは、以下のように、SWOTの4つの要素を掛け合わせ、方向性を導き出すフレームワークです。クロス分析をすることで、どのような対策が必要かを考えやすくなります。
積極戦略 | (強み x 機会) 強みを機会にいかして成長する |
差別化戦略 | (強み x 脅威) 強みをいかして脅威を退ける |
改善戦略 | (弱み x 機会) 弱みを解消し機会にいかせるよう施策を練る |
致命傷回避 ・撤退戦略 | (弱み x 脅威) 弱みを受け止めたり脅威を避けたりして、悪影響を最小限にとどめる |
コンテンツマーケティングの行動計画案を出す
クロス分析により、例えば、次のような行動計画案を出します。
- 技術的な内容のウェビナーを作り、見込み客の育成を行う
- 見込み客にウェビナーを紹介するため、ターゲティングメールができるようにする
- リスティング広告でハウツー系のコンテンツをアピールして流入を増やし、資料をダウンロードしてもらうことで、見込み客を獲得する
- 自社の持っている顧客リストを活用して、テキストメールでお客さまへの情報発信を行う
- 製品紹介のうまい担当者が実際に説明しているところを動画にして活用することで、見込み客の育成を改善する
- 導入事例の制作を外注して、コンテンツを増やしていくことで、サイトへの流入数を増やす
- ウェブの効果レポートを作成する
- 専門業者を使って、自社メディア制作に力を入れる
- ロードショーや勉強会などのオフラインイベントだけではなく、ウェビナーやバーチャル展示会のようなオンラインイベントにも力を入れる
Step2. コンテンツマーケティングの目標とKPIを設定する
お客さまに「知っていただき」「興味を持っていただき」「欲しいと思っていただき」「実際に買っていただき」「使っていただき」「満足していただく」。この流れを「集客」「育成」「販売」「満足」という4つのプロセスに大きく分けています。このプロセスごとに、目標とその達成度を評価するKPI(重要業績指標)を設定していきます。
目標 | 戦略 | KPI | |
---|---|---|---|
1. 集客 | ウェブサイトへの新規訪問者数を1年で30%増やす | 事例やハウツー系のコンテンツを作り、オンラインのプレスリリースや外部メディアでの紹介を行う | 広告以外でのウェブサイトへの流入数 |
2. 育成 | – ウェブから獲得する見込み客の数を1年で20%増やす – ウェブからの見込み客の獲得コストを10%減らす | – ウェビナーや技術資料の提供により、専門家だと認知してもらう – リスティング広告で宣伝する | ウェブから獲得する見込み客の数 |
3.販売 | 見込み客から顧客化率を1年で5%から7%に上げる | 製品デモの動画や費用対効果がわかる事例集を増やす | デモ機の貸し出しを促す 見込み客から顧客への転換率(%) |
4. 満足 | 既存顧客向けにより買い替えを10件増やす | パーソナライズメールにより、効率よく集客して、ロードショーをおkナウ | 買い替え件数 |
Step3. ペルソナを設定してお客さまを理解する
コンテンツマーケティング戦略を成功させるには、お客さまが誰であるのかを、まず明確にする必要があります。そうすることで、お客さまにリーチできる適切なコンテンツを作れるようになるからです。
そこでペルソナを設定します。マーケティングにおける、ペルソナとは、自社の商品やサービスを買っていただきたいお客さまの像です。既に購入されたお客さまもいれば、将来、買っていただくお客さま像でもあります。お客さまの購買段階(カスタマージャニー)によって、購買意欲や心理、何を望んでいるかも違います。そこを踏まえて、コンテンツを発信することが重要です。
※ペルソナとカスタマージャーニーの詳細については、別途記事を書く予定です。記事完成後、リンクを貼るようにします。
ここでは主に3つのことをします。
1.統計データを収集する
訪問者、メルマガ購読者、およびソーシャルメディアのフォロワーなどの統計データを収集します。
Webやソーシャルメディアなどの分析ツールを使うことで、個人特性の概要は得ることができます。また企業情報もネットやリサーチ情報などから得ることができます。
個人特性 | 企業特性 |
年齢 性別 居住地 収入 教育 ︙ | 売上 従業員数 業種 部門 役職 ︙ |
2.ヒアリングをする
ペルソナについてさらに詳しく知るには、ヒアリングは欠かせません。既存のお客さまだけではなく、社内のチーム、営業やサポート、開発チームにヒアリングをして、フィードバックを集めましょう。
例えば、既存のお客さまに質問できる場合は、「どうして購入したのか?」「課題やニーズは何なのか?」「どういう効果があったのか?」「何を比較の時に重視したのか?」「購買を決めるのにためらった理由は何か?」「どのような情報やコンテンツはニーズとマッチしているのか?」「情報収集における優先事項は何か?」などを聞きましょう。これらを明確にすることで、お客さまの興味や関心を理解するようになります。相手に響くコンテンツを作る上で、とても参考になります。
3.ペルソナを作る
統計データやエンゲージメント情報、ヒアリング内容を基にペルソナを作っていきます。誰に対して何をどう提供しようかがイメージできるようになります。ペルソナの情報には、問題や課題、情報源、行動の動機なども含めましょう。これらを理解することで、相手の興味をひくコンテンツ、相手が抱えている問題の解決に役立つコンテンツを作り、適切なコンテンツの種類や方法で発信できるようになります。
ペルソナを作ることで、相手に合わせたコンテンツを提供がしやすくなります。ただ、購買プロセスやカスタマージャーニーのどの段階にいるのかによって、欲しい情報やコンテンツは違いますし、消費者心理も変わってきますので注意が必要です。
Step4. コンテンツマッピングを行う
これは購買プロセスにおいて、ペルソナが各プロセスで必要とする情報(コンテンツ)を特定します。主な流れとしては、ペルソナを設定し、購買プロセスの各段階で「どんな疑問を持っているのか?」「どんな情報が求められているのか?」をリストします。それに対して答えを考えます。次に、その答えを具体的にどのようなコンテンツで提供できるのかを整理します。
購買プロセスの段階でお客様のニーズは違う
例えば、お客さまが何かしらの問題に直面していたとします。購買プロセスの本当の最初の段階では、まだ、それが自分にとっての問題であるということを強く認識していないかもしれません。次に「問題は認識したけども、特に対策をする必要性を感じていない」という状態になります。そして、「問題は既に認識していて、解決策に興味を持っている」「問題を早く解決したい。この商品・サービスが欲しい」というニーズの変化があります。そのため、その状況や状態に合わせた情報提供が必要になります。
Step5. コンテンツのギャップを特定する
(※もしコンテンツマーケティングを始めたばかりで、コンテンツがほとんどない場合は、この手順は無視して、次の手順に進んでください)
ここでは自社に目を向けます。私たちは、既にさまざまなコンテンツを持っています。 例えば、ブログ、動画、技術資料などです。これらのコンテンツがマーケティングの目標達成に役立っているかどうか、これからも有効活用できるのかどうかを精査し、判断しなければなりません。また、足りていないコンテンツは何かを調べる必要もあります。
既存コンテンツのチェックを行います。ただ、きちんと現状把握や分析をやろうとすると、思っている以上に時間をかけてしまう可能性があります。そのため、必要に応じて、キーとなるコンテンツだけを対象にするなども検討する必要も出てくるかもしれません。
主にやることは次のとおりです。
- 資料やブログなど、既存コンテンツをスプレッドシートなどに記録する
- そのコンテンツがどこにあり、その有用性を評価し、まとめます
※サイトの分析であれば、ツールを使うことで、URL、ページタイトル、ディスクリプション、コンテンツの長さ、被リンク、シェア数、サーチエンジンのランキングなどもわかったりします。 - どのようなコンテンツを改善していく必要があるのか、また使わないかの目安を付けておきます。例)動画の内容や長さを変える、Twitterの使用を止める
- できれば、内容やメッセージの改善をするためにも、調査レポートや競合他社の資料などの情報も把握する
- そして、コンテンツのギャップを特定します
Step6. お客様に常に伝えたいことを決める
ここも自社視点ですが、お客様に伝えたい軸となるコンテンツを決めることも、ブランディングにおいて大切です。それが自社の強みや特長にかかわることだからです。自社のブランド価値を高める基礎となるメッセージや物語を考えましょう。ただ、自社の商品やサービスといったブランドの特徴や、それが生まれたきっかけなどの物語だと、自分たちが発信したい情報という感が強いので、お客さまに響くものではありません。
この物語の主役はお客さまです。お客さまが抱えている問題をブランドによって解決できるという物語です。「どういう状況なのだろうか?」「どういう挑戦があるのだろうか?」「なぜその挑戦を今までしていなかったのか?」「どのように物語を進められるのだろうか?」などを問うことで、お客さまに、どう伝えたらいいのかが見えてきます。このブランド物語は、お客さまのカスタマージャーニーを円滑にするためのものとも言えます。
Step7. コンテンツマーケティングのチャネルプランを立てる
ここでは、上記で設定したペルソナやカスタマージャーニー、購買プロセスも踏まえ、お客さまとの接点やチャネルなどの現状を把握します。そして、どのようなコンテンツをどのように発信するのかのプランを立てていきます。主な流れは次のとおりです。
- チャネルの現状分析をする
その結果を踏まえ、どこに焦点を当てるのか、どこを強化していくのかなどを考えます。 - チャネルの目的を明確にする
カスタマージャーニーや購買プロセスとも関連付けます。 - コンテンツ計画を立てる
どのようなコンテンツを、どのようにお客さまに届けるかを考えます。 - メトリクスを設定する
各施策の目標を具体的にして、メトリクスを活かし、タスクレベルで改善を行っていくことが大切です。 - CTAも忘れない
最終的な購買につなげるため、各施策の効果を測定しながら、CTAもしっかり改善していきましょう。 - ペルソナを再度意識する
ペルソナを意識したメリハリのあるチャネルプランを作っていきましょう。
詳しくは、『 チャネルプランを立てる 』を確認してください。
Step8. コンテンツ制作のリソースとワークフローをマネジメントする
コンテンツ制作を実際に進めていく上では、どんなリソースが必要で、どう調達するのかをマネジメントする必要があります。またコンテンツ制作から公開までのワークフローを明確にしていく必要があります。
- コンテンツの制作や更新をする担当者と役割は明確になっているのか?
- コンテンツを作る上で、どのようなリソースが必要か?
- コンテンツを公開するワークフローは決まっているのか?
Step9. コンテンツカレンダーを作成する
コンテンツ計画を着実に実施するため、コンテンツカレンダーを作ります。いつどんなキャンペーンやプロモーションを行うのかを登録します。また、それに伴い、具体的にどんなコンテンツをいつまでに制作するのかも入力します。こうすることで、何を作らないといけないとか毎回考える必要はなく、コンテンツ作りに注力できます。また全体が見えることで、例えば、プロモーションの効果を上げるため、既に作ったコンテンツを別の形式で提供するなどのプランも立てやすくなります。
Step10. コンテンツを作る
コンテンツマーケティング戦略を立てるには、思っている以上に準備があったかもしれませんが、ここでようやくコンテンツ制作に入ります。コンテンツカレンダーに従って、コンテンツを作っていきます。
コンテンツを実際に作る際は、今までのあるコンテンツとは何が違うのか、どういう付加価値を提供できるのかを意識しましょう。同じトピックで上位表示されるコンテンツを参考までにチェックしてみるのもよいでしょう。さらにSEO対策をするため、キーワードの調査もしておきましょう。
また、「どのようなスタイルやトーンでメッセージを伝えるのか?」「どのような構造にするのか?」たとえば、ブログや記事などであれば、文量や画像の使い方などを決めておく必要があります。
Step11. コンテンツを発信する
制作した後に大事なことは、もちろんコンテンツを発信して広げていくことです。お客さまに知ってもらい、シェアしてもらえるよう、メルマガで案内したり、ソーシャルメディアで発信していきましょう。より多くの人に知ってもらえるよう、リターゲティングなどの活用も検討しましょう。これらは、 SEO としても大事な施策です。
Step12. 効果測定をして、改善していく
コンテンツマーケティング戦略がうまくいっているかどうかの評価をします。コンテンツマーケティングの目標とKPIを最初の方に設定しましたが、それらを達成しているのかどうか、あるいは順調に目標に向かっていっているのかを確認しましょう。
例えば、ブログの評価であれば、Google Analyticsでコンテンツのパフォーマンスを確認したり、その他の分析ツールを使いソーシャルメディアのアクティビティやエンゲージメントをチェックしましょう。また、Google アラートなども地味に便利です。作ったコンテンツについてシェアされていたり、話題になっていたりすることも確認できます。
状況や進捗を確認しながら、コンテンツマーケティングの進め方、コンテンツ作りを継続的に改善していきましょう。デジタルマーケティングだけの話ではないですが、効果測定をして改善していくことは重要です。
コンテンツをマーケティング戦略を立てる方法は以上となります。しっかりと効果測定をしながら、継続的に改善して、成果を出していきましょう。