『 はじめてのマーケティング 』シリーズ – インサイドセールス: メリットと課題 について
前回は、改めてインサイドセールスとは何か?どのような特徴があるのかをご紹介しました。今回は、インサイドセールスのメリットや現場ではどのような課題があるのかについてご紹介します。
インサイドセールスのメリット
インサイドセールスは、お客さまに効率よくアプローチできる
インサイドセールスによって、多くの見込み客に対して、効率よくアプローチできるのがメリットの一つです。すべての見込み客に対して、同じような対応をしていては効率が悪いです。そのため、まずは、既に収集しているお客さま情報やヒアリングした情報を基に、お客さまの現状、購買意欲や状態などを精査して、これからの進め方を決め、優先度をつけます。つまり受注確度をつけ、それに応じて対応方法や進め方を変えていきます。
例えば、有望な見込み客に対しては、商談を設定して、外勤営業にフォローアップしてもらいます。そうすることで、外勤営業はより確度の高いお客さまに集中でき、受注につなげやすくなります。また確度が低いものは、インサイドセールス担当者が電話、資料送付、メールなど、効率よく対応していきます。結果的に、見込み客一人あたりの対応コストを下げ、営業チームとして、より効率よくアプローチできます。
インサイドセールスの人数が少なくても、多くのお客さまとやりとりできる
インサイドセールス担当者は、客先に訪問する時間を短縮できるため、より多くの見込み客に対して接触できます。例えば、従来の営業スタイルでの外勤営業は、商談時間や移動時間などを考慮すると、1日に訪問できる数は、多くて3、4件ほどでしょう。しかし、インサイドセールスの場合は、一日に何十件と電話をかけることができます。つまり、10倍ほどの見込み客にアプローチすることができます。また電話のスクリプトやメールのテンプレートなども用意しておくことで、1件あたりの営業活動を効率化できます。その結果、一人でかなりの数の見込み客を同時に担当することができます。つまり、見込み客のニーズが顕在化し、商談につながるまでのプロセスを担う人数は、少人数でも対応できるということです。
見込み客の育成や営業プロセスの効率化を図れる
営業担当者の立場としては、目の前の売上を上げていくため、受注確度の高いお客さまのフォローを優先しがちです。受注までに時間がかかりそうなお客さまの対応はどうしても優先度が下がります。そのため、潜在的なお客さまへのフォローアップが十分に行えず、受注機会や商談機会を失ってしまうこともあります。しかし、前述した通り、外勤営業とインサイドセールスと役割を分けることで、外勤営業は提案からクロージングの業務に集中でき、一方でインサイドセールスは、見込み客と連絡をとりあい、有益な情報を提供し続けることで、お客さまと関係を構築し、商談化も図れます。
また、購買段階のかなり早い段階で、すぐに商談にならないお客さまについては、マーケティングと連携して、メールマガジンなどで情報を提供するなど、効率よく購買意欲を高めていくことができます。役割を分け、お客さまの購買段階に応じて、適切なフォローアップができることで、中長期的には、商談や受注機会の喪失を防ぎ、より成果を出せることが可能になります。
インサイトセールスを通じて、営業担当者の育成や教育も効率的に行える
お客さまのところに訪問して営業するためには、製品や技術、業界の知識、お客さまの状況や課題の理解力、コミュニケーション力など、さまざまなスキルが求められます。ある程度のレベルがないと、対面営業は難しいものです。経験豊富な、売れる営業担当者を採用しようとしても、良い人材を採用するのは容易ではありません。また新人の営業担当者を採用し、教育や育成をするにしても、一人前になるまでに時間がかかります。特に、ベテランの営業担当者と同行して学んでもらう進め方の場合、移動時間を含め、1日で同席できる訪問商談の数も限りがあります。
一方、インサイドセールスは、新入社員の教育や人材育成を効率的に行うことができます。外勤営業のような訪問やその準備などが必要ないため、外勤営業の担当者と比べ、より多くの商談に同席したり、実際にお客さまと電話で話したりできます。ベテランの人がどのように説明しているのか、対応しているのかを効率よく学ぶことができます。
また、インバウンド手法で得た見込み客であれば、お客さまは何かしら自社の製品やサービスに興味を持っているため、話しやすいということがあります。交渉段階ではないため、スクリプトなどを用意しておくことで、ある程度の情報提供は可能です。つまり、インサイドセールスは、実践の機会が多く、製品や業界の知識、お客さまとのやりとりや対応方法などを効率よく学ぶことができるのです。実際に、異業種から転職しインサイドセールスからはじめ、そこで学び、ある程度の経験や知識、スキルを得て、外勤営業になるというキャリアパスもあります。
売上見込の管理がしやすくなる
需要や営業機会を作るマーケティング、商談を作るインサイドセールス、受注する外勤営業のようにプロセスや役割を分け、顧客管理システムを使うことで、受注前の案件や売上見込を管理がしやすくなります。まずパイプライン管理がしやすくなり、一定の期間内に受注すると予想される商談の数や売上目標に達成するまでの距離などが把握できるようになります。目標達成に必要な見込み客や商談を確保できているのかなどを確認、管理できます。さらにどの案件が、いつ、いくらで受注できそうか、受注見込みや売上傾向などの把握や管理もしやすくなります。それによって、営業担当者は適切な商談や見込み客に対して、適切なタイミングで素早く、対応や対策ができるようになります。
インサイドセールスの課題や懸念
お客さま情報を共有・管理できる顧客管理システムが必要になる
お客さまが提案や見積がすぐに欲しいということでもなければ、見込み客を獲得してから商談に至るまでには、通常、さまざまなやりとりがあります。お客さまの状況や課題、BANT情報などヒアリングしたり、お客さまに業界や課題解決などの情報を提供したり、いろいろあります。これらのやりとりの内容は、商談をしていく外勤営業にとっては必要な情報です。
また、例えば、以前お客さまの会社と接点があったり、違う部署の人とやりとりがあったりすることもあります。そのようなことも含め、すべての関連する情報を自社内で共有することは、見込み客とのスムーズなやりとり、商談化率の向上、商談を円滑に進めていくため必要なことです。属人化しないためにも、それらを実現できる顧客管理システムの導入は必要です。
競争が厳しくなる
距離や時間的な問題があったり、コロナウイルス対策であったり、何かしらの理由で客先に訪問できないということはあります。そのため、営業活動を効率的に行おうと、電話営業をする企業は増えています。その結果、直接の競合他社とは違う企業と、お客さまの時間の取り合う状況になってきています。お客さまの立場から考えると、知らない企業からのテレアポも含め、電話を受けることが増えているため、嫌がる傾向にあると言えると思います。
電話の繋がりやすさ、お客さまとの関係性、自社の商品やサービスについて持たれている知識や情報量などを踏まえると、新規の企業だけではなく、以前つながった企業へのアプローチも重要です。
また、同業他社も同じように営業をかけるため、競争が厳しくなっています。そのため、競合他社を調査し、競合他社との差別化や競争上の優位性を保とうとすることは大切です。独自の売りとなる特徴によって、お客さまの課題や困ったことを解決できる価値を伝え、提供していくことが重要になります。
相手が求めている情報を伝えきれないことがある
インサイドセールスは、電話やメール、Web会議ツールなどを使って、お客さまとやりとりします。このとき、各担当者のスキルに依存しないよう、チームとして情報提供やコミュニケーションの標準化や体系化をしておくことが大切です。そうしないと、チームとして活動の効率が落ちるだけではなく、担当者によっては適切に商品やサービスの良さを伝えきれないという問題が起きます。
また、お客さまからの技術的な質問に答えるのは総じて難しいものです。技術者や外勤営業につなげて対応することができればいいのですが、聞かれたタイミングで答えられず、そこでやりとりが終わってしまうこともありえます。そのため、少しでもお客さまが求めている情報を伝えられるよう、担当者のスキルアップは必要です。チームとして定期的に営業や技術トレーニングなどを実施し、育成や教育に力を入れることはとても重要です。
すべての業務を完了するのに十分な時間がない
インサイドセールスの典型的な悩みの一つは、十分な時間がないということです。インサイドセールスの業務内容は、アプローチする見込み客一覧の準備、見込み客へのフォローアップ、お客さまの役に立つ情報発信、ミーティングや商談のスケジュール調整、システムへのデータ入力など、多岐にわたります。外勤営業よりも効率的に見込み客にフォローできるといっても、時間が足りないとう問題は必ず起きます。そのため、顧客管理システムを活用したり、メールのテンプレートや雛形、電話のスクリプトなどを用意したりして、いかにゼロから人がやるのではなく、効率的に行えるようにするかが重要になります。
有望な見込み客を得られるとは限らない
展示会やセミナー、ホームページ、ウェビナーなど、マーケティング活動により獲得した見込み客に対して、インサイドセールスはアプローチします。見込み客の質を求めると数が減り、数を求めると質に問題があったりします。そのため、少しでもお客さまが求めている情報をマーケティング活動に取り入れ、より多く、より質の高い見込み客を獲得していこうとすることが重要です。定期的に、マーケティングや外勤営業と情報交換や懸念事項の共有などをしながら、チーム全体として協力し合い、対策をしていきましょう。
モチベーションを維持する
客先に訪問する外勤営業と違い、インサイトセールスは社内で作業を行います。業務も効率化や標準化をすればするほど、電話をかける、情報を提供するなどを繰り返すことが増えていきます。すると、仕事が単調になり、モチベーションが下がってしまう可能性があります。そのため、やりとりする相手のことを調べ、それぞれのやりとりがユニークな機会だと考えることが大切になってきます。お客さまの課題を解決するため、顧客体験を向上させるため何ができるかに焦点を当てていきましょう。そうすることで、毎日何かしら新しいことを経験できたり、情報を得たりすることができます。
また、新規営業については、断られることも多く、モチベーションが下がるだけではなく、時間がとられます。そのため、最初のスクリーニングはテレアポ企業に外注し、その次のステップとして、インサイドセールス担当者が時間をかけて、情報提供や関係を構築し、商談化を目指すといった、組み合わせを行うのも手です。
インサイドセールス: メリットと課題 のまとめ
今回は、インサイドセールスのメリットや課題についてご紹介しました。インサイドセールスのメリットとして、お客さまに効率よくアプローチできること、少人数でも多くのお客さまに対応できること、見込み客に対する育成の実施や効率化、売上見込の管理がしやすくなることなどを挙げました。営業組織としては、営業担当者の育成や教育も効率的に行えるのもメリットの一つです。
インサイドセールスの課題については、お客さまの情報を共有・管理できる顧客管理システムが必要になること、競争が厳しくなること、相手が求めている情報を伝えきれないことがあること、すべての業務を完了するのに十分な時間がないこと、有望な見込み客をいつも得られるとは限らないこと、モチベーションを維持することが難しいなどをご紹介しました。
これらを踏まえ、インサイドセールスを導入するのかどうか、また導入済みであれば、課題をどう対応していくのかを決めていくとよいでしょう。